関西社会学会第59回大会



[大会プログラム] (しおり付PDF)

[1 学会大会のご案内] [2 シンポジウムについて] [3 一般研究報告について]


1 学会大会について

 

 関西社会学会第59回大会は、松山大学で下記のように開催されました。今回は、「被爆がもたらす<意味>の現在――戦争体験の社会学という視座」、「環境メディアの誕生と社会」の2つのシンポジウムを開催しました。一般会員230名、臨時会員43名、計273名の参加者があり、盛況のうちに終了いたしました。大会の運営にあたられた松山大学の方々のご尽力に心より感謝いたします。

 

(1) 大会会場
 松山大学 文京キャンパス 〒790-8578 松山市文京町4−2
 問い合わせ先:松山大学人文学部社会学科
 山田富秋先生 電話(089)925-7111
 E-mail:tomi.yamada@nifty.com

 ●会場までの交通案内図

 

(2) 大会日程
 5月24日(土)

  13:30       受付開始
  14:00〜16:30  一般研究報告T
  16:50〜     総会
  18:00〜20:00  懇親会

 5月25日(日)

   9:00       受付開始
   9:30〜12:00  一般研究報告U
  13:00〜16:30  シンポジウム

 

(3) 費用
 大会参加費 2000円(会員・臨時会員、一般・学生とも)
 懇親会費   5000円(一般)、3000円(学生)

 


2 シンポジウムについて

 

シンポジウム第1部会  「被爆がもたらす<意味>の現在――戦争体験の社会学という視座」

 

 毎年8月6日を頂点として“年中行事”のごとくに反復されてきたヒロシマをめぐる営みがあります。ヒロシマを忘却するな。記憶の風化を防ぎ、被爆体験を継承しよう。この主張もまた反復されてきています。それは“定番”となり“定型化”され、硬直してしまっているヒロシマをめぐる言説空間といえるかもしれません。しかし同時に硬直した空間からは、被爆を経験した人々の生の語りや思い、切実な声が常に溢れ出しているのも事実です。原爆から生き延びてきた人を「被爆者」と呼ぶこと自体にいかなる力の行使があるのか。戦争を知らない世代的な落差の中で、被爆した人々の声や現実といかに向き合うことができるのだろうか。本シンポジウムでは、文化論的な視点から研究されてきた直野章子氏(九州大学)、被爆した人々の聞き取りを進め、語られる体験や現実と自らとの距離がもたらす意味を考えられている八木良広氏(慶応義塾大学大学院)に報告をお願いしました。さらに、地元である中国新聞社から、記者の森田裕美氏よりにお願いしており、被爆問題を取材する現場からの報告をいただける予定です。また高橋三郎氏(京都大学名誉教授)に討論者をお願いしています。近年になり戦争体験を反芻し、いま一度その意味を現在にとらえ返そうとする様々な営みが行われています。社会学においても同様ですが、本シンポジウムが被爆というできごとをめぐり硬直した言説空間を揺るがせ、被爆がもたらす<意味>の現在に新たな楔を打ち込む社会学的な実践の可能性を示すことができれば、と考えています。

研究活動委員 好井裕明・澤田善太郎

 

<報告者> 直野章子(九州大学)・八木良広(慶応義塾大学大学院)・森田裕美(中国新聞社)
<討論者> 高橋三郎(京都大学名誉教授)
<司会>  好井裕明(筑波大学)・澤田善太郎(広島国際学院大学)

 

1.〈被爆体験〉の境界と〈被爆〉を語る言葉

直野 章子(九州大学)

 被爆者の多くが発するこの言明を「被爆者の特権意識」、「被爆体験の絶対化」、さらには「被爆者の排他性」と翻訳して非難する研究者、批評家や運動家たちは後を絶たない。原水爆禁止運動や反戦平和運動のなかでは、自らの体験をもとに発言する被爆者に対して「被爆者面するな」という暴言が吐かれてきた。近年では、日本の戦争責任を追及する運動のなかで、日本人被爆者の語りは、被害に捉われ加害の過去を振り返ることのできない「典型的な日本人の被害者意識」と揶揄されている。
 いずれの批判も、被爆者が体験を根拠に語ることに対する違和感や苛立ちを表わしている。体験のない者は語ることができない位置に追いやられると感じるからだ。だが、原爆を生き延びた人たちを「被爆(体験)者」という枠組みに閉じ込めてきたのは誰なのか。
なにが被爆者に「遭うたもんにしかわからん」と言わしめるのか。なにが被爆者を「被爆者」として語らせるのか。被爆をめぐる言説空間において、どのように発話と沈黙が配置されているのか。そして私たちは被爆者の言葉をいかにして聴くことができるのかについて考えてみたい。

 

2.ヒロシマをめぐる語りの磁場をめぐって ――ライフストーリー研究の一つの試み

八木 良弘(慶応義塾大学大学院)

 被爆者の現実にいかに向き合うか。本報告で探求したい問いはこれである。被爆者を対象とした調査・研究は1950年代初頭から多くの人文・社会科学者によって主に共同研究として実施されてきた。課題とされた「〈原爆被害の全体像〉の再構成、もしくは〈原爆体験の思想化〉」が未だに実現に至っていないながらもその研究の蓄積から現代の被爆者問題研究者が学び得る点は多い。しかし、研究者が被爆という体験を直接的にした/同時代的に共有した、あるいは、戦後国家補償に基づいた援護政策の実施を求める等の被爆者運動に研究者として参与する経験を持った、ということから、これまで半ば問う必要性がそれほどなかったと思われる問題が、特に体験者の多くが亡くなっている現代において浮かびあがってきている。その問題とは、被爆者の現実への向き合い方である。インタビューという場での被爆者の語りや、手記・自分史といったモノを分析の拠り所とする際にそれらにいかに向き合い解釈を加えていくか。ライフストーリー論をベースにした研究を専門とする報告者の調査経験を踏まえながら、上記の点について報告していきたい。

 

3.被爆地から「伝える」仕事を続けて

森田 裕美(中国新聞記者)

 

シンポジウム第2部会  「環境メディアの誕生と社会」

 

 現代社会において、<環境>は今や日常に有り溢れるメディアとなり、新しい<メディア>としての地位を確乎不動のものとしつつある。貨幣というメディアがわれわれの日常の隅々にまで浸透しているのと同じように、<環境>も新しいメディアとしてあらゆる領域に浸透しさまざまな影響を及ぼしている。
 「地球にやさしい」をキャッチ・コピーとする<環境の商品化>はそのほんの一例に過ぎないし、定年を迎えた団塊世代は「田舎暮らし」へと誘われ、環境学習は中初等教育の正課となっていくだろう。さらに、世界に目をやるならば、二酸化炭素の排出権取引が中国などでも大きな市場を作りはじめている。
 今回のシンポジウムでは、新しいメディアである<環境メディア>が環境社会学の従来の研究領域を越えてどのような領域でどのような作用・影響を及ぼしつつあるのかを考えてみたい。
 シンポジストには、学会外部から環境社会学者・丸山康司さん(東京大学教養学部付属教養教育開発機構)と地理学者・中島弘二さん(金沢大学文学部)、内部からは地域表象論を展開しておられる寺岡伸悟さん(奈良女子大学文学部)にお願いした。

研究活動委員 田中滋・井上眞理子

 

<報告者> 丸山康司(東京大学)・中島弘二(金沢大学)・寺岡伸悟(奈良女子大学)
<討論者> 湯川宗紀(龍谷大学大学院)・平岡義和(静岡大学)
<司会>  田中滋(龍谷大学)・井上眞理子(京都女子大学)

 

1.「環境問題における全体と個の緊張」

丸山 康司(東京大学)

 本報告では、中山間地における獣害問題や地域再生を事例に取り上げながら、環境言説の多義性について議論したい。
環境問題は多くの人に受容されるようになり、正面から異を唱えることは困難になった。不可逆的な問題の起こる危険性や世代間倫理といった点を考慮すると、このこと自体は部分的には妥当である。その一方で、こうした「正しさ」は社会に対してアンビバレントな影響を及ぼしつつある。
 一つには、環境言説の内包する社会的望ましさに伴う政治性の問題であり、「一人一人のこころがけで…」といった動員力を発揮する場合がある。これは、結果として社会に対する抑圧をもたらす場合があり、別の問題を喚起してしまう。その一方で、環境言説を取り込むことによって、中山間地の地域再生などの取り組みが活性化し、地域の人々が将来に希望を持つようになった場合もある。
後者を考慮すると、環境言説全体を否定することについては慎重に扱う必要がある。また実際の所、不確実性が伴う予測に基づく意志決定という環境問題の特質を考慮すると、環境問題の「怪しさ」そのものを立証することは不可能でもある。こうした点を踏まえて、「環境問題」をどのように再構成するかについて議論したい。

 

2.「戦後日本における国土緑化運動の展開―「社会的自然」の観点から」

中島 弘二(金沢大学)

 近年の英語圏の地理学における重要な成果の一つに「社会的自然social nature」という問題設定がある。これは自然を、様々な主体間の力関係のもとで物質的かつ意味論的につくられたものとしてとらえる考え方であり、多様な意味と力がせめぎ合う開かれた場として「自然」を再定位する試みである。
 本発表ではこのような「社会的自然」の視点を通して、戦後日本における国土緑化運動の展開を批判的に検討する。1950〜1960年代のいわゆる「造林ブーム」の時期に隆盛を極めた国土緑化運動は、緑の羽根や植樹祭、森林公園の設置などを通じて国民を緑化の担い手として動員するシステムであり、また自然と国民の種別的な結びつきのうえに日本の国民的同一性を実現するような一種の「共感の装置」でもあった。本発表ではこのような国土緑化運動において、「みどりの風景」がどのように生み出され、そしてどのようにして人々に消費されていったのか。それを「社会的自然」の生産と消費の問題として批判的に読み解きたい。

 

3.農産物生産と環境の情報化

寺岡 伸悟(奈良女子大学)

 日本の農山村は、農産物の生産に関わってさまざまな変化を経てきた。消費者の生活水準の高まり、流通過程や市場の変化、大型小売店の発生、消費主義の拡大、そしてそれらの結果としての産物の商品性(=イメージetc.)の重視、またそうした消費に対応できる産地形成などである。こうした変化を、ここでは、生産・流通・消費をとりまく環境の情報化(メディア化)、またその深化という観点から見てみたい。こうした状況は、産地をさらに変化させ―近年の地域ブランドにみられるような―産物と産地のまるごと消費へと進んでいるようにみえる。こうしたなかでは、農山村の地域性や自然景観、そこでの労働風景が、商品の一部となる。こうした現状や過程を、関西のある農山村地域を事例として考察したい。こうした考察のなかで、地域のコンテクスト生成に注目したメディア観(環境メディア)と、そこで重要なコンテンツとなる「環境」について考えてみたい。

 


3 一般研究報告について

 

 報告時間は25分、質疑応答は5分です。報告をご希望の方は (1)一般報告申込用紙 (2)報告要旨 の2点を揃えて3月28日(金)必着で事務局までお送りください。一般報告申込用紙は前号よりお送りいたしておりません。基本的に学会ホームページからダウンロードしていただきますようお願い申し上げます。ダウンロードが難しい場合には、事務局までその旨ご連絡頂きましたら、郵送にてお送りいたします。研究活動委員会では、学会ホームページからダウンロードした申込用紙・報告要旨テンプレートを使用した電子メールによる申込みを推奨します。ひとつの電子メールに一般報告申込用紙と報告要旨の2点のファイルを添付してお申し込み下さい。一般報告申込の際の電子メールのタイトルは必ず「第59回大会一般報告申込 ○○○○(○の部分に氏名を記入)」として下さい。迷惑メールとの判別をしやすくするためにも必ず、このタイトルでお願いいたします。電子メールにてお申し込みいただいた場合には、申込受付のお知らせ及び、一般報告プログラムの速報版を電子メールにてお送りいたします。郵送・電子メールともに、申込用紙・報告要旨のいずれか1点のみのお申し込みは無効になりますのでご注意ください。

 なお、現在非会員で第59回大会の一般研究報告を希望される方は、必ず3月28日(金)まで入会手続きを完了してください。

 

(1) 一般研究報告申込用紙について

 学会ホームページから「一般研究報告申込用紙」のファイル[MS WORD形式]をダウンロードしてご使用ください。ファイル名はダウンロードしたものそのままではなく、必ず「59申込 ○○○○(○の部分に氏名を記入)」としてください。サブタイトル・共同報告者・情報機器など、申し込み後の変更はできませんのでご注意ください。
 なお、申し込みの際、希望する部会を下記の分野リストから選んで3つまでご記入願います(これらの分野名はあくまで部会編成の作業を効率化するための目安であり、最終的な部会名は報告内容に合わせて適宜工夫させていただきます)。


【一般研究報告分野リスト】

1 理論・学説 2 社会調査法・社会学研究法
3 階級・階層・社会移動 4 家族・人口
5 農山漁村・地域社会 6 都市
7 政治 8 組織・社会運動・集合行動
9 経済・経営・産業・労働 10 教育
11 文化・知識・科学 12 宗教
13 社会心理・社会意識 14 コミュニケーション・情報
15 社会病理・社会問題 16 社会福祉・医療
17 エスニシティ 18 ジェンダー
19 社会史・歴史社会学 20 比較社会学・地域研究・国際関係
21 環境 22 その他


研究報告のプログラムは4月開催の理事会にて決定されます。
メールでお申し込みいただいた場合は、事務局より各報告者に返信メールをお送りしますので、ご確認をお願いいたします。


一般研究報告申込用紙 (←ここからダウンロードしてください)

一般研究報告申込用紙はこちらからダウンロードしてください。なお、事務局ニュースでお知らせしました通り、電子メールの添付ファイルによる報告申し込みは、このホームページよりダウンロードした「一般研究報告申込用紙」・「報告要旨テンプレート」をともに使用された場合にかぎりますので、ご注意ください。
申込用紙の「研究歴」欄は、修士課程または博士前期課程入学以後の年数を記入してください。「関西社会学会大会奨励賞規程」により、研究歴15年未満の会員は奨励賞の対象になります。

 

(2) 報告要旨について

 下記の様式にもとづき作成してください。用紙サイズ・書式を設定済みの「報告要旨テンプレート」のファイル[MS WORD形式]を学会ホームページからダウンロードしてご使用いただけます。ファイル名はダウンロードしたものそのままではなく、必ず「報告タイトル(の要約) ○○○○(○の部分に氏名を記入)」としてください。報告タイトルは、そのままではファイル名としては長くなりすぎる場合も多いですので、適宜内容がわかる程度に短くしてください。


  • ・B5版横書き1枚でお願いします。
  • ・提出された原稿をそのまま印刷しますので、パソコン/ワープロによる原稿を歓迎します。
  • ・本文は1200字以内にしてください。
  • ・上下左右の余白を2cm程度あけてください。
  • ・原稿の冒頭3cm程度を用い、下記の例のように報告題目・所属(大学または機関名のみ) ・氏名を記入してください。
  • ・フォントは可能なかぎり次の通りにしてください。
  •  報告題目・サブタイトル: 14ポイントのゴシック体
  •  所属・氏名: 10.5ポイントのゴシック体
  •  本文: 10.5ポイントの明朝体
  

報告題目

──サブタイトル──
△△大学 □□□□(氏名)



…………………………………………………(本文)…………………………………………………………
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報告要旨テンプレート(←ここからダウンロードしてください)

報告要旨テンプレートはこちらからダウンロードしてください。用紙サイズ・余白・書式は設定してありますので、文字だけ入れ換えてご使用ください。サブタイトルが不要の場合は削除してください。記入上の注意事項は、本ページ内の該当項目をご参照下さい。電子メールの添付ファイルによる報告申し込みは、このホームページよりダウンロードした「一般研究報告申込用紙」・「報告要旨テンプレート」をともに使用された場合にかぎりますので、ご注意ください。