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関西社会学会第56回大会は、大阪市立大学で下記のように開催されました。
近代化というメガトレンドは常に転換期をもたらしつつ進行しているが、 ポストモダンと言われて久しい現在もまた、新たな社会構想が問われ、新段階を画する 社会システムの構築が求められ続けている。いわゆる青年前期から青年後期に至る若者たちは、 時代の先端性を示し、社会のありかたに大きな影響力を及ぼす可能性をはらんでいる。 いつの時代にも若者・青年は存在し、若者論は語られ続けてきているが、あらためて現時点での 若者論の可能性を探り、若者の可能性を明らかにし、新たな社会のあり方を展望してみたい。
(研究活動委員 落合恵美子・宮本孝二)
<報告者>
宮本みち子(千葉大学)・原田隆司(甲南女子大学)・大澤真幸(京都大学)
<司会>
落合恵美子(京都大学)・宮本孝二(桃山学院大学)
宮本みち子(千葉大学)
青年期から成人期への「移行期」変貌の背景には、一方にはグローバル経済競争の激化、IT革命と 情報経済化という産業構造シフトがあり、もう一方には長寿化、少子高齢化などライフコースと人口構造 シフトがある。こうした社会経済環境の変化のなかで、移行期は雇用(仕事)、所得、生活保障、世帯形態、 社会関係などの諸局面において、成人期とは異質の「移行的」性格を帯びた新しいステージとして立ち現れ ている。それが若者世代にとって新しい時代の幕開けとなるためには多くの検討が必要と思われる。そこで 本報告では、近年の諸研究を踏まえて、パラダイム転換として「移行期」を検討してみたい。
原田隆司(甲南女子大学)
本報告では、ボランティアという現象を取り上げて、若者論を試みてみたい。
論点を限定するために、本報告は、ボランティアを人間関係としてとらえるという
前提で展開したい。この人間関係は、次の二つを区別できるだろう。ひとつは、ボラ
ンティア活動をする側とその対象となる側の関係であり、もうひとつは、ボランティ
ア活動に参加する人たちを組織化する側の人間関係である。この観点から、ボランテ
ィア活動と若者との関わり方を論じることは、すなわち、(1)若者たちのボランテ
ィア活動の対象となるのは誰か、(2)若者たちをボランティアに導き、活動させて
いるのは誰か、という問題を論じることになる。
相手がいなければ成り立たないと同時に、実際には個人で行うことができないという
ボランティアの特徴から、若者たちの姿は、誰かとの具体的な関係としてみえてくる。
それは、つまり、世代間の関係であり、異質な人間同士の間に成立する関係のありかた
ということである。世代論や時代論というよりは、他の世代との関係のとりかたとして
の若者論を試みてみたい。
大澤真幸(京都大学)
1980年代末期以降の若者文化は、「オタク」と呼ばれる若者たちの登場と一般化、そして 変質によって特徴づけることができる。それにしても、オタクとは何であろうか。それは、 従来からある「趣味人」や、あるいは特定の分野の専門家と、どのように違うのだろうか。 私の考えでは、オタクの−−現象面での−−特徴は、情報の濃度と意義の高度との間の極端な アンバランスにある。前者が後者を圧倒的に凌駕しているのだ。通常は、情報は、「意義」に その存在の根拠を求め、収集されることになる。それゆえ、意義の高度と情報の濃度との間には、 正の相関関係がある。だが、オタクの場合には、その相関関係が失われ、むしろ、両者は、積極的に 無関連化されてすらいる。こうした点によって特徴づけられるオタクが、どのような社会的メカニ ズムに媒介され、また変容してきたかを考察することを通じて、若者の心性や、その背景にある社 会構造を考察する。「現実」への逃避−−「からの」逃避ではなく−−と超虚構化の間の共役的な 関係が、考察の鍵となる。
関西圏の経済的地盤沈下が指摘されているが、関西圏を何とか活性化しようという試みが現在続 けられている。特に文化的な活性化をめざす動きが、行政によっても支援されつつ進行している。 このシンポジウムでは、大阪の文化社会学的研究を機軸にして、大阪の文化的エネルギーを再点検 したい。まず第1に、大阪の笑いの文化を取り上げ、次に、大阪のはらむアジア的な文化力を、在日 のエスニシティ文化、とりわけ民族祭りに探り、最後に、スポーツという角度から大阪文化を再考する。
(研究活動委員 進藤雄三・森下伸也)
<報告者>
井上宏(日本笑い学会会長)・飯田剛史(富山大学)・杉本厚夫(京都教育大学)
<司会>
進藤雄三(大阪市立大学)・森下伸也(金城学院大学)
井上宏(日本笑い学会会長)
大阪とはどんな都市なのか、「文化」の側面から考えるとき、「笑いの文化」を抜きに論じることはで きない。大阪において「笑いの芸能文化」が盛んであるというだけでなくて、大阪人の生活のなかに、 暮らしの仕方のなかに「笑い」が織りこまれている。大阪弁をはじめとして、大阪人の生活態度、価値観、 ものの考え方のなかに「笑いの文化」が一貫して流れていると言ってもよい。「サムライ社会」における ように、「笑い」を軽蔑することなく、むしろ「笑い」を奨励しさえする文化を発達させた。その発達の 所以を、私は大阪が江戸時代から一貫して「商人社会」として発展をみてきてところに求めている。「交渉 する」ことが日常の生業としてあって、しかも厳しい「競争関係」のなかで「親和的」に生きなければなら ない生活が「笑いの文化」を発達させたと言える。それは大阪弁の構造に映し出されると同時に、大阪人の 「口の文化」を生み出し、上方落語や上方漫才、上方喜劇などの「笑いの芸能文化」を生み出すにいたって いる。「笑いのない大阪なんて考えられない」という大阪を論じてみたい。
飯田剛史(富山大学)
「民族のお好み焼き」といわれるように、現代の日本の都市は多民族化が進んでいる。その中で在日コリ
アンは世代を重ね、生活文化は日本人のそれとほとんど均質化してきている。これまで芸能界やスポーツ界で
在日のスターがたくさんいたが、いずれも日本名を名乗りその「在日性」はあまり見えなかった。しかし在日
住民の一部は、この文化的均質化の中で逆に、民族的アイデンティティを自覚的に保ちながら生きて行こうと
している。その仕事は、多様な分野で「魅力ある差異」を持つものとして貴重な貢献をなしている。
大阪府には16万名の在日住民がおり、文化の様々な面でその比重は小さくない。ここでは80年代以降の
在日の民族祭りの展開を紹介し、大阪文化に創造的に関わっている状況を示したい。
たとえば「四天王寺ワッソ」という祭りは、古代朝鮮から多くの人々が高い文化をもって渡来したことを、
色鮮やかな衣装の約千人のパレードと、聖徳太子による出迎えの儀式で表現するものである。スポンサーであ
った在日金融機関の経営破綻によって一時中断したが、昨年には、在阪日本企業の支援と多くの日本人の参加
を得て、新しい大阪の祭りとして再生した。この祭りを通して人々は、過去のアジアとの結びつきを再認識し、
現在のアジアとの共生を模索し始めているように思える。在日「韓流」の行方を注目したい。
杉本厚夫(京都教育大学)
観ることから参加することへ:ジェット風船を飛ばしたり、メガホンを打ち鳴らしたり、応援のパフォーマン
スを持った観客は、観ることから参加することへと変容した。この「ノリ」のよさは大阪の「いちびり」文化を
基盤としている。また、野次の面白さは上方漫才の「ボケ」と「突っ込み」で構成されている。
感情と勘定:勝ち負けより、興奮できたゲームだったかが大事。つまり、みる値打ちがあるかどうかで判断し、 面白い試合だったら「もと」が取れたと言う。興奮するという「感情」を「勘定」に読み替えるのである。「ギャ ンブルは負けるからはまりだす」と言うように弱いタイガースが逆に観客を惹きつける。
孤立から一体へ:法被を着ることで、応援グッズを持つことで、仲間であることを表明した途端に一体感が生
まれる。風船をくれたり、応援グッズを貸してくれたり、相手を受け入れる雰囲気を創り出す。甲子園は都市化
された社会における孤立感に耐えかねた大阪人の拠り所となっている。
煽る文化と鎮めの文化:六甲颪(タイガースの応援歌)やそれぞれの選手の応援歌は、ただ単に観客を煽るだ
けではない。同時に、観客を鎮める働きを持っている。優勝したときに道頓堀川に飛び込んだ(落ちた)のは、
実は興奮した観客が自らを鎮めるためにとった行動なのだ。そこには、「つかみ」と「おち」の笑いの文化が潜
んでいる。
報告時間は25分、質疑応答は5分です。報告をご希望の方は下記の2点を揃えて3月25日(金)必着で事務局 までお送りください。ただし、このホームページからダウンロードした申込用紙・報告要旨テンプレートをご使用 の場合にかぎり、ひとつの電子メールにこれら2点のファイルを添付してご送付いただいても結構です。郵送・電 子メールともに、申込用紙・報告要旨のいずれか1点のみのお申し込みは無効になりますのでご注意ください。
事務局ニュースに同封の「一般研究報告申込用紙」を使用するか、または、このホームページ
(下記)から「一般研究報告申込用紙」のファイル[MS WORD形式]をダウンロードしてご使用ください。サブタイ
トル・共同報告者・情報機器など、申し込み後の変更はできませんのでご注意ください。
なお、申し込みの際、希望する部会を下記の分野リストから選んで3つまでご記入願います(これらの分野名は
あくまで部会編成の作業を効率化するための目安であり、最終的な部会名は報告内容に合わせて適宜工夫させていた
だきます)。
1 理論・学説 | 2 社会調査法・社会学研究法 | |
3 階級・階層・社会移動 | 4 家族・人口 | |
5 農山漁村・地域社会 | 6 都市 | |
7 政治 | 8 組織・社会運動・集合行動 | |
9 経済・経営・産業・労働 | 10 教育 | |
11 文化・知識・科学 | 12 宗教 | |
13 社会心理・社会意識 | 14 コミュニケーション・情報 | |
15 社会病理・社会問題 | 16 社会福祉・医療 | |
17 エスニシティ | 18 ジェンダー | |
19 社会史・歴史社会学 | 20 比較社会学・地域研究・国際関係 | |
21 環境 | 22 その他 |
一般研究報告申込用紙
一般研究報告申込用紙はこちらからダウンロードしてください。なお、事務局ニュースでお知らせしました通り、電子メールの添付ファイルによる報告申し込みは、このホームページよりダウンロードした「一般研究報告申込用紙」・「報告要旨テンプレート」をともに使用された場合にかぎりますので、ご注意ください。
報告題目・サブタイトル: 14ポイントのゴシック体 所属・氏名: 10.5ポイントのゴシック体 本文: 10.5ポイントの明朝体 報告題目△△大学 □□□□(氏名)
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報告要旨テンプレート
報告要旨テンプレートはこちらからダウンロードしてください。用紙サイズ・余白・書式は設定してありますので、文字だけ入れ換えてご使用ください。サブタイトルが不要の場合は削除してください。記入上の注意事項は事務局ニュースをご覧ください。なお、事務局ニュースでお知らせしました通り、電子メールの添付ファイルによる報告申し込みは、このホームページよりダウンロードした「一般研究報告申込用紙」・「報告要旨テンプレート」をともに使用された場合にかぎりますので、ご注意ください。