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関西社会学会第58回大会は、2007年5月26日、27日の2日間にわたり、同志社大学で下記のように開催されました。今回の大会では「アジアの中の日本―ハイブリッドモダンの社会と文化」および「オーラルヒストリーと歴史−質的調査法の可能性をめぐって」という2つのシンポジウムが開かれました。
昨年(2006年)5月より、関西社会学会各年次大会において若手会員が発表した優れた「一般報告」に対して「関西社会学会大会優秀報告賞」を授与することになりました。本賞は、受賞者をはじめとする若手会員の研究の進展と大会報告の活性化、ひいては社会学のいっそうの発展を目指そうとして設けられたものであり、本学会独自の新しいこころみです。本年5月26日、27日、同志社大学で開催される第58回大会で第2回目の報告賞授与となります。
賞の授与対象は、原則として大学院博士前期課程あるいは修士課程に入学したのち研究歴15年未満の会員による報告です。事前の報告要旨、当日の報告レジュメ、報告そのものを総合して部会司会者が「独創性」、「分析・説明力」、「表現力」の3項目において評価し、これにもとづいて、理事によって構成された選考委員会が選考し、最終的には理事会が報告賞を決定します。本賞は3〜5点の報告に授与され、受賞報告者には賞状ならびに賞金が授与されます。さらに、受賞報告については、その要旨や選考概要が『関西社会学会事務局ニュース』および『フォーラム現代社会学』に公表されます。 会員のみなさまには本賞へのご理解とご支援をお願いいたしますとともに、とくに若手会員の積極的な学会報告活動を期待いたします。
(常任理事 大野道邦)
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近代化というメガトレンドは常に転換期をもたらしつつ進行していますが、ポストモダンといわれて久しい現在もまた、新たな社会構想が問われ、新段階を画する社会システムの構築が求められ続けています。この視点から3年連続のシンポジウムを企画しましたが、最終回の今回はアジア的視野において日本社会や日本文化を問い直すシンポジウムといたします。
政治や経済に諸問題を孕みつつも東アジア共同体の構築が展望されていますが、日本社会や日本文化はその中でどのように位置づけられ、いかなる役割を担うことになるのでしょうか。あるいはどのような社会や文化として組み込まれていこうとしているのでしょうか。このような問題意識から、まず、東アジア研究の成果を総括し東アジア社会の新たな発展のイメージを探求しつつ日本社会を省察・構想するご報告を冒頭に置き、それを受けて個別の具体的諸テーマについて、主に中国、台湾、韓国をフィールドとし、日本との比較分析や関連性解明をめざし研究を進められている方々に、アジア的ないし日本的な近代性、すなわちハイブリッドモダンの現在を問うという観点からご報告いただく予定です。
研究活動委員(鵜飼孝造・宮本孝二)
<報告者>
首藤明和(兵庫教育大学)・山中美由紀(龍谷大学)・河口充勇(同志社大学)
<討論者> 友枝敏雄(大阪大学)
<司会> 鵜飼孝造(同志社大学)・宮本孝二(桃山学院大学)
首藤明和(兵庫教育大学)
本報告では、「アジアのなかの日本・日本のなかのアジア」という立ち位置から、問うべき東アジア世界の内実を構築し、同時に、そのなかでの東アジアと日本の多種多様な相互作用を社会構造から捉えることで、日本社会を省察・構想し、かつ東アジア社会の発展のあり方を模索する。 具体的には、?「東アジア」やその「問題性」として表象されるものは、日本社会の存立構造(「東夷の中華」「戦後」「単一民族論」など)の投影であることを確認し、?市場、権力、階層、地域、歴史、文化が織り成す関係性を批判的に分析し、自己や社会に対する認識を活性化させ、新しい社会を構想する方法として「越境」や「比較」を位置づける。そして、?東アジア的特質を内包した「市民社会」を「公共的な政治的アソシエイション」として捉え、?国家や市場など全体的システムに対する「対抗的相補的な関係」と、「自由・平等・友愛(形式合理性)/協同・自治・相互承認(実質合理性)」のせめぎ合いに下支えされた「地域主義」及び「連邦主義」を、いかに紡ぎ出してゆくか考えてみたい。
河口充勇(同志社大学)
「アジアのシリコンバレー」台湾・新竹は、アジアにおける近代化やグローバリゼーションのあり方を社会学的に考えるうえで格好の調査フィールドである。1980年に新竹サイエンスパーク(中央政府直属のハイテク産業高度集積地区)が開設されて以降、新竹地域は、産業構造や都市空間だけでなく、人口規模、人口構成、地方政治、地域アイデンティティにいたるまでの様々な面においてドラスティックな再編過程を経てきた。そうした地域再編は初期には地域の意思とほとんど無関係に推移したが、近年では、まちづくりNPOや地域雑誌を中心に、地域を主体とした地域再編に向けての取り組みが徐々にみられるようになっている。本報告では、2005年より新竹で実施している旧台湾総督府天然瓦斯研究所調査プロジェクトの成果を踏まえつつ、そうした受動的再編から能動的再編への転換のメカニズムを明らかにするとともに、それを通して、日本におけるアジア理解の向上に有効なインプリケーションを示したい。
山中美由紀(龍谷大学)
人口の推移という点からみると、経済社会の発展に伴い、多産多死→多産少子→少産少子の段階を経て人口は安定するものとみられていたが、近年、先進諸国をはじめ東アジアの国々でも、人口置換水準を下まわる出生率の低下が進行した。東アジアの少子化は、程度の差はあれ経済発展のために人口抑制が行われたことによるが、急激な出生率低下により一転して少子高齢化問題と人口減少という共通の課題を抱えるようになった。
出生率低下の激しい国をみれば、家族主義的な文化的伝統を持つという共通の特性が指摘されている。東アジア諸国においては特にアジア的ともいえる家族観、性別役割意識といった伝統的価値が根強い。本報告では出生率が1.08という水準にまで落ち込んだ韓国を取りあげ、家族とジェンダーの視点から少子化現象を検証する。出産という個人の主観的行為と伝統的価値、そして国家の家族政策がどのようにかみ合うのか、日本との比較を視野に入れながら少子化社会の方向性を探りたい。
歴史学から生まれたオーラル・ヒストリーは、歴史学の枠組みそのものを問い直し、再活性化させています。「イギリスにおけるオーラル・ヒストリーの展開」(酒井順子『日本オーラル・ヒストリー研究 創刊号』、2005年)によれば、女性など「声を残さない人々の声を収集する」more historyの時期、そして、口述史料にも文書史料と同等の権利を認め、従来の歴史研究の前提を乗り越えようとするanti-historyの時期、そして個人の証言の中にあるファンタジーや主観的なものにも価値を見いだし「語られたことの中にある「事実」を問うというよりは、語られたことが作りだしている意味が問われている」としたhow history の時期、最後に、歴史を作る過程に専門家だけでなく民衆も参加する可能性を認めていった1990年代以降のpublic history が来ます。
今回のシンポジウムでは、歴史学と直接対決したり、記憶と政治という難題に正面から挑むよりはむしろ、各登壇者のこれまでのオーラル・ヒストリーの実践を踏まえて、具体的なナラティヴを提示していただき、間接的にはなりますが、そこから歴史、あるいは記憶の問題を問い直すという作業をしていただきたいと思います。
研究活動委員(山田富秋・落合恵美子)
<報告者>
小林多寿子(日本女子大学)・野上 元(筑波大学)・倉石一郎(東京外国語大学)
<討論者> 蘭由岐子(神戸市看護大学)
<司会> 山田富秋(松山大学)・落合恵美子(京都大学)
小林多寿子(日本女子大学)
近年、ライフストーリー、ナラティヴ、物語などを手がかりとしておこなわれる調査研究は社会学を超えて多領域へ議論の輪が広がっている。このような質的研究への関心の高まりのなかで個人の経験のとらえかたを<オーラリティ>という観点であらためて考える必要はないだろうか。オーラルに語られたものでみるのか、書かれたものでみるのか。それはインタビューか言説分析かという方法の選択あるいはパロールかエクリチュールかという焦点の対象への問いにもつながる。しかしここでは<オーラリティ>をリテラルなものあるいは書くこととの差異で論じるというよりも<オーラルリティ>に注目することによってどのように個人のライフをとらえる可能性がありうるのかをあらためて検討する機会としたい。ライフストーリー・インタビューによって得られるオーラルストーリーから<個人の歴史性>をどのように考えることができるのか。私自身の「個人的記憶と家族のストーリー」から出発した日系アメリカ人研究を具体的な例としながら考察したい。
野上 元(筑波大学)
本報告では、マス・メディアに媒介される国民的規模の集合的記憶としての「戦争の記憶」ではなく、いわゆる戦友会のように、はじめから共有そのものを目的とするところの集合的記憶でもない、「地域社会における戦争の記憶」に注目し、個人の自己語りが地域社会をどのように意識し、またそのなかでいかなる地位を与えられてきたのかを考えることにしたい。もちろん「国民国家(あるいはマス・メディア)」や「戦友会(的な共同性)」は分析の有力な補助線となりうるだろうが、むしろそれらでは見えてこない、地域社会の共同性と「戦争の記憶」を関係づけている様々な変数がこの場合重要である。
報告者は、1997年より断続的に、長野県下水内郡栄村で戦争体験の聞き取り調査を行っており、それらの一部と戦争(体験)文学に対する言説分析とを併せて、昨年2月に『戦争体験の社会学――「兵士」という文体』(弘文堂)を上梓した。そこでは戦争体験がテクストに固定され配列されていくメカニズムを歴史的に追跡したが、本報告では、むしろテクスト性の問題の理論的な地位を下げて、「地域社会」という集合性と「戦争の記憶」の生成の関係を分析することにしたい。
倉石 一郎(東京外国語大学)
本報告で考えてみたいテーマは、教育・人間形成研究におけるオーラル・ヒストリーの可能性、もっと言えばオーラル・ヒストリーを駆使した教育・人間形成研究の発展を阻むものはなにか、ということである。
私は片足を教育学の世界に突っ込み、教育・人間形成研究とオーラル・ヒストリーを接合させたいと常々思い続けてきた。しかしながら、両者の接合はなかなか困難であることを痛感させられてきた。つまり、インタビューにおいて対象者の被教育経験(学校時代の思い出など)を直接尋ねても、こちらが思ったようにはなかなか語ってくれないという経験を積み重ねてきた。そこで本報告では、次の二つの点について考えを述べてみたい。(1)被教育経験のインタビューには、どのような原理的困難性があるのか。(2)そうした困難にもかかわらず優れた成果を残した過去の研究(たとえばハンフリーズ『大英帝国の子どもたち』、オスカー・ルイス『サンチェスの子供たち』)を手がかりに、原理的困難性の乗り越えの方途を探る。
一昨年度および昨年度の大会(第56 ・57回)にあわせて「社会調査士制度に関するフォーラム」をもちましたところ多数の参加があり、有益な情報や意見の交換が行われました。同制度はすでに定着期に入ろうとしているように思われますが、その整備にあたっては、フォーラムで出された声も一定の役割を果たしたものと自負しています。
他方、同フォーラムは、社会調査士資格取得のためのカリキュラム等をめぐる議論のなかで、同制度への期待と評価は共有しつつも、はからずも「社会学(教育)とは何か」をあらためて問い直す機会にもなったようです。一方で社会学(教育)が資格や調査によって規定(矮小化?)されかねないことへの懸念が表明され、他方、時にはもっとも初歩的な社会調査の授業さえ難しい社会学教育の実状の一端が紹介されました。
そこで、本年度は同フォーラムのいわば「番外編」として、社会調査(の授業)や社会調査士制度にリファーしつつ、社会学教育の現状と展望を語り合う会を催すことになりました。これまでのフォーラム同様、何らかの統一見解を導き出すというよりも、それぞれの社会学教育の現場と経験に即して、自由な情報や意見の交換の場にしたいと考えています。会員各位の積極的な参加を期待しております。
(社会学教育委員長 芦田徹郎)
<話題提供者>
新 睦人(奈良女子大学名誉教授)
他に2名を予定(交渉中)
<司会>
芦田 徹郎(甲南女子大学)
報告時間は25分、質疑応答は5分です。報告をご希望の方は (1)一般報告申込用紙 (2)報告要旨 の2点を揃えて3月26日(月)必着で事務局までお送りください。一般報告申込用紙は前号よりお送りいたしておりません。基本的に学会ホームページからダウンロードしていただきますようお願い申し上げます。ダウンロードが難しい場合には、事務局までその旨ご連絡頂きましたら、郵送にてお送りいたします。研究活動委員会では、学会ホームページからダウンロードした申込用紙・報告要旨テンプレートを使用した電子メールによる申込みを推奨します。ひとつの電子メールに一般報告申込用紙と報告要旨の2点のファイルを添付してお申し込み下さい。一般報告申込の際の電子メールのタイトルは必ず「第58回大会一般報告申込 ○○○○(○の部分に氏名を記入)」として下さい。迷惑メールとの判別をしやすくするためにも必ず、このタイトルでお願いいたします。電子メールにてお申し込みいただいた場合には、申込受付のお知らせ及び、一般報告プログラムの速報版を電子メールにてお送りいたします。郵送・電子メールともに、申込用紙・報告要旨のいずれか1点のみのお申し込みは無効になりますのでご注意ください。
メールの送信先は「関西社会学会事務局 (ksa@osk3.3web.ne.jp)」 (スパムメール防止のため、メールアドレスのアットマークを全角にしております。メールを送信されるときには、アットマークを半角に変えて下さい。)となります。
学会ホームページから「一般研究報告申込用紙」のファイル[MS WORD形式]をダウンロードしてご使用ください。ファイル名はダウンロードしたものそのままではなく、必ず「58申込 ○○○○(○の部分に氏名を記入)」としてください。サブタイトル・共同報告者・情報機器など、申し込み後の変更はできませんのでご注意ください。
なお、申し込みの際、希望する部会を下記の分野リストから選んで3つまでご記入願います(これらの分野名はあくまで部会編成の作業を効率化するための目安であり、最終的な部会名は報告内容に合わせて適宜工夫させていただきます)。
1 理論・学説 | 2 社会調査法・社会学研究法 | |
3 階級・階層・社会移動 | 4 家族・人口 | |
5 農山漁村・地域社会 | 6 都市 | |
7 政治 | 8 組織・社会運動・集合行動 | |
9 経済・経営・産業・労働 | 10 教育 | |
11 文化・知識・科学 | 12 宗教 | |
13 社会心理・社会意識 | 14 コミュニケーション・情報 | |
15 社会病理・社会問題 | 16 社会福祉・医療 | |
17 エスニシティ | 18 ジェンダー | |
19 社会史・歴史社会学 | 20 比較社会学・地域研究・国際関係 | |
21 環境 | 22 その他 |
研究報告のプログラムは4月開催の理事会にて決定されます。原則として、メールでお申し込みいただいた場合を除いては、事務局より各報告者にご返事は差し上げませんが、ご了承ください。
一般研究報告申込用紙 (←ここからダウンロードしてください)
一般研究報告申込用紙はこちらからダウンロードしてください。なお、事務局ニュースでお知らせしました通り、電子メールの添付ファイルによる報告申し込みは、このホームページよりダウンロードした「一般研究報告申込用紙」・「報告要旨テンプレート」をともに使用された場合にかぎりますので、ご注意ください。
下記の様式にもとづき作成してください。用紙サイズ・書式を設定済みの「報告要旨テンプレート」のファイル[MS WORD形式]を学会ホームページからダウンロードしてご使用いただけます。ファイル名はダウンロードしたものそのままではなく、必ず「報告タイトル(の要約) ○○○○(○の部分に氏名を記入)」としてください。報告タイトルは、そのままではファイル名としては長くなりすぎる場合も多いですので、適宜内容がわかる程度に短くしてください。
所属・氏名: 10.5ポイントのゴシック体 本文: 10.5ポイントの明朝体 報告題目
△△大学 □□□□(氏名)
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報告要旨テンプレート(←ここからダウンロードしてください)
報告要旨テンプレートはこちらからダウンロードしてください。用紙サイズ・余白・書式は設定してありますので、文字だけ入れ換えてご使用ください。サブタイトルが不要の場合は削除してください。記入上の注意事項は、本ページ内の該当項目をご参照下さい。電子メールの添付ファイルによる報告申し込みは、このホームページよりダウンロードした「一般研究報告申込用紙」・「報告要旨テンプレート」をともに使用された場合にかぎりますので、ご注意ください。