テーマ「社会学と在日朝鮮人研究」
趣旨
在日朝鮮人研究は長らく歴史学を中心として展開されてきたが、1980年代以降は解放社会学や都市社会学、エスニシティ論などの領域を中心に、社会学でもこのテーマの研究が増加していった。とりわけ、在日コリアンの集住地区が点在する関西は、研究のひとつの拠点となり、多くの知見が蓄積されてきた。
その後、一定の社会的地位を得る在日コリアンの割合が増加し、あるいは世代、国籍、アイデンティティなどの面で在日コリアン内部の多様化がすすむ一方で、「嫌韓」現象やヘイトスピーチ、ヘイトクライムなど在日コリアンが排外主義のターゲットになる現象も目立つようになっている。このように、在日コリアンを取り巻く複雑な社会的現実は、現代社会の矛盾や困難を映し出しているともいえる。
同時に、前世紀末以降、人文学・社会科学のなかでポストコロニアル論が展開されてきたが、こうした学術的な知見は、在日コリアンを取り巻く上記の複雑な社会的現実とどのような関係を切り結んできただろうか。
これらの問題意識をふまえると、社会学のなかでも改めて在日朝鮮人研究の意義を検討する時期にきているように思われる。そこで、この領域で関西社会学会を代表する中堅の研究者に登壇していただき、自身の研究にもとづきながら、在日朝鮮人研究が社会学にどのような貢献を果たしたかを論じる。その上で、コメンテーターによるコメントやディスカッションを通じて、社会学において在日朝鮮人研究がいかなる意味をもつのか、同時に在日朝鮮人研究にとって社会学はいかなる意味をもつのか、あるいはもちうるのかを議論したい。
報告者・タイトル
李 洪章(神戸学院大学)「社会学は在日朝鮮人にとっての祖国/民族をいかに捉えるのか」
徐 阿貴(福岡女子大学)「複合差別の経験から共生のコミュニティを切り拓く——関西における在日朝鮮人女性のアクティビズム」
川端浩平(津田塾大学)「在日コリアンと文化的実践——川崎の在日コリアン・ラッパーから考える(仮)
コメンテーター
板垣竜太(同志社大学)
孫片田晶(立命館大学)
司会
高谷 幸(東京大学)
蘭 信三(大和大学)
(研究活動理事 高谷幸・蘭信三)