シンポジウム:地方から露わになる亀裂と構造的暴力
趣旨
このシンポは,「オキナワ」と「フクシマ」を念頭に,近年亀裂が拡大しているかに見える日本社会を巡り,とりわけ地方圏から透視可能な構造的な問題に切り込むことを意図する。その際,女性学や平和学など,社会学にも関わりの深い諸科学との対話を図る。
問題意識
「オキナワ」と「フクシマ」は,問題の発生経緯や経過にそれぞれ違いは見られるものの,現代日本において,地方圏の内部および地方圏と都市圏との間に大きな亀裂を生じさせている点で共通している。この亀裂は,地域,階層,職種,年齢階層,およびジェンダー等々の立場や利害の小さな裂け目を拡大して引き裂き,露わにしている。米軍基地の集積によって生じた沖縄社会の構造的な問題や,原発事故と復旧問題で露わになった地方と都市との亀裂の深さを,私たち社会学研究者は改めて確認する必要があるだろう。
他方で,2014年には沖縄辺野古のヘリポート建設問題を焦点にいくつかの選挙が闘われた。また,原発・震災からの復興をめざすさまざまな住民活動が活発に展開されている。この過程で,新たな地域コミュニティの形成の可能性や,問題意識を等しくする人々の距離を超えた連帯のきざしも垣間見えているといえるだろう。
こうした観点から,本シンポジウムでは,最近日本社会が経験した構造的な亀裂の状況を再検証するとともに,その克服の可能性を探ってみたい。社会学研究者は,研究分野はさまざまであろうとも,大きな社会的事象の観察を通して,時代と社会の微細な変化を読み解く必要がある。隣接科学の研究者もまじえ,こうした課題を追求するための機会を提供する。
登壇者
秋林こずえ 平和学・同志社大学
岸 政彦 社会学・龍谷大学
佐藤彰彦 社会学・福島大学
関 嘉寛 社会学・関西学院大学
コメンテーター
早川洋行 社会学・滋賀大学
菊地夏野 社会学・名古屋市立大学
司会 栗岡幹英 社会学・奈良女子大学
(研究活動委員 栗岡幹英)