2024年度第75回関西社会学会大会のご報告

2024年5月25日(土)~26日(日)、関西社会学会第75回大会は、大和大学にて対面で開催されました。久しぶりの懇親会には若手からベテランまで多くの会員が集う賑やかな大会となりました。一般研究報告は11部会49報告。多くの会員にご参加いただき,いずれの部会でも活発な議論が展開されました。また大会運営では、事前申込・事前振込・報告要旨のPDF化も定着し、スムーズに開催できました。

すっかり名物企画として定着した「自著を語る~MY FIRST BOOK~」では,2部会6名の方に自著に込めた思いを語ってもらいました。参加者からは「次は自分が」との思いを強くしたといった感想も聞かれました。

今大会からは若手企画も復活しました。組織者、若狹優さん(日本大学)を中心に1年間の準備を経て、「『状況の社会学』の可能性探求する」が実施されました。若狹さんは司会・報告を担い、他に粕谷圭佑さん(奈良教育大学)、木村雅史さん(作新学院大学)、成田まおさん(神戸大学)が報告しました。次回大会では4つの若手企画を準備しています。

開催校シンポジウム「戦争社会学の可能性と課題―岩波シリーズ『戦争と社会』を手掛かりに―」は,公開シンポジウムとして実施され、非会員も含め多くの参加がありました。2013年から企画が始まった戦争社会学の到達点である岩波シリーズの編者・著者を迎え、「戦争の時代」「戦時下で生きる」という言葉がリアリティを持つ状況下で、戦争社会学の限界と可能性をあらためて語っていただきました。司会は開催校である大和大学の蘭信三さん・加藤久子さん、報告は、山本昭宏さん(神戸市外国語大学)、長志珠絵さん(神戸大学)、津田壮章さん(京都大学)、吉田純さん(京都大学)、討論者は、野上元さん(早稲田大学)、石原俊さん(明治学院大学)、西村明さん(東京大学)、岩崎稔さん(大和大学)、福間良明(立命館大学)さん、一ノ瀬俊也さん(埼玉大学)でした。

大会シンポジウムとして、現在(過去150年にわたり増加を続けてきた日本人口が減少局面に入るなど)大きな転換期を迎えていることを踏まえ、「これからの社会、これからの社会学」を共通テーマとする2つのシンポジウムを開催しました。

シンポジウム1「人口減少社会に生きる/活きる社会学」では、日本やドイツ、フィンランドの事例を軸に、家族や人口、ケアや労働の持続可能性を、学際的(人口学、地域研究、家族社会学、人類学)に検討し、これからの社会での社会学的展開の可能性を考える契機になりました。大山小夜さん(金城学院大学)の司会で、報告者は平井晶子(神戸大学)、中里英樹さん(甲南大学)、髙橋絵里香さん(千葉大学)、討論者は筒井淳也さん(立命館大学)でした。

シンポジウム2「関西における<社会>の発見と自由な知の創造」では、「これからの社会」を考えるために、大正期の拡大過程にある社会において、賀川豊彦や米田庄太郎によって創成された関西における社会学の、理論と方法を始点に、今日我々が直面している社会が収縮していく過程を捉えようとする試みが行われました。具体的には、「これからの社会」関西における地域経済と自治体の関係や、そこで生じる労働問題、阪神・淡路大震災がもたらした社会・文化の変容、さらには、敗戦後から、今日に至るまで、戦前の社会学的な理論認識はどのように、継承され、かつ新たな展開を遂げているのかなどが論じられました。司会は梅村麦生さん(神戸大学)、報告者は荻野昌弘さん(関西学院大学)、稲津秀樹さん(鳥取大学)、長松奈美江さん(関西学院大学)、岡崎宏樹さん(神戸学院大学)で、討論者は宇城輝人さん(関西大学)、阿部真大さん(甲南大学)でした。

なお,自著を語る,若手企画、開催校シンポジウム,大会シンポジウムについては次号『フォーラム現代社会学』で紹介させていただく予定です。

大和大学は新設大学であるため制度を作りながらの大会運営でしたが、懇親会もある「フル」での対面開催を実施していただきました。蘭信三大会実行委員長、ならびに大和大学の実行委員会の先生方,司会担当の先生方をはじめたくさんの方々のご支援により,無事に大会を終えることができました。

皆さまのご協力に心より感謝申し上げます。

(研究活動委員長 平井晶子)