第76回大会若手企画①「死に対処する現代社会の知と実践——『死の社会学』の再起動に向けて」

テーマ

「死に対処する現代社会の知と実践——「死の社会学」の再起動に向けて」

概要

エミール・デュルケームの『宗教生活の基本形態』に示された、死や死者をいかに対処するかが社会秩序の維持に関わっている、という問題意識は、死の社会学的研究における視座の基礎となり、以降、宗教や死者儀礼といった死の集合表象によって、象徴的に死者と生者が社会関係を築く方法が明らかにされてきた。

近年、日本は少子高齢化による人口減少という人口動態の過渡期にあり、年間150万人を超える死亡数への対処をめぐって、国家による死・死者の法的処理、死の医療化、葬儀などの死者儀礼の産業化・商品化など、死の物象化による合理的な死の近代的対処が浸透している。しかし、一方で、遺族等の親密な関係者らは、死や死者の意味を見出す象徴的な連帯を依然として求めている。同様に、戦禍を経た近代国家や共同体で死者をいかに記憶するかという問題提起が見られるように、その内実には、死者が社会的に疎外され、無意味となることへの抵抗があるだろう。このような死の意味をめぐって死の近代的対処との間で生じる摩擦に、現代の死の社会学は注視すべきである。

本部会では、宗教、家族、消費、植民地主義、戦争、記憶、死の意味などの観点から、現代社会における死を契機とする社会秩序の危機への対処のあり方を問うことを目的とする。しばしば、死の社会学的研究は、ミクロな親族の死別に研究対象を狭めてしまう。しかし、いまや、人口動態の変化に代表されるようなメゾ・マクロな現象にも目を向けたうえで、質的・量的に研究を蓄積し、死の社会学の理論を発展させ、応用されるべき状況にある。以上を念頭に、死をめぐる社会現象を対象に研究を進めてきた研究者たちとともに検討を重ね、今後の死の社会学の展開を展望したい。

企画者

藤井亮佑・関西学院大学

参加者

磯部美紀・大谷大学真宗総合研究所

梅村麦生・神戸大学

辻井敦大・甲南大学

韓光勲・大阪公立大学

渡壁晃・関西学院大学