関西社会学会大会における優秀な報告に授与される関西社会学会大会奨励賞(第68回大会)が,下記の報告2点に決定されましたので,ご報告いたします。
- 後藤美緒(日本大学) ラジオに現れた「漫才」-戦前期JOBKにおける演芸番組の構成に着目して-
- 吉岡洋介(千葉大学) 大卒就職機会における学校歴仮説とコミュニケーション能力-インターネット・パネル調査による計量分析の試み-
後藤美緒さんの報告では,「近代漫才の父」と呼ばれることになった秋田実が,ラジオ放送の創成期に,それまで低級とみなされていた「萬歳」を,家庭の団らんの場で聴くことのできる「二人漫談」,その後の「漫才」として,ラジオの普及とともに発展させた経緯を,1935年,1936年の資料を丹念に整理しながら,そこに,ひとりの教育エリートの役割を確認した内容となっている。
吉岡洋介さんの報告では,大卒就職者の就職において,コミュニケーション能力を考慮してもなお,学校歴と言われる選抜度の高い大学出身者ほど大企業や官公庁への就職機会が多いという仮説を立て,大学4年生500名を対象に,2015年6月時点と2016年4月時点にパネル調査を実施した。ロジスティック回帰分析の結果,コミュニケーション能力を統制しても学校歴仮説は支持され,コミュニケーション能力そのものは就職機会に影響するというよりも大学選抜度やクラブ参加と密接に関連しているとの明確な知見が示された。
各部会の司会者から,優れた報告として推薦をいただいた方々が他にもおられましたが,奨励賞選考委員会では,上記のお二人の報告が特に優れていると判断いたしました。
(大会奨励賞選考委員長 神原文子)