現代日本社会におけるナショナリズムとヘイト/フォビア
在特会の一連の活動をはじめとしたヘイト・スピーチやヘイト・クライム,また韓流ドラマ放送への抗議デモなどに見られる嫌悪=フォビアを典型的な例として,ここ数年の日本の政治・社会状況は,これまでにないような形でナショナリズムや排外主義に傾いているように見える。このような動きは一部の突出したものばかりが目立つが,その背景や要因として,国際的には経済のグローバル化と結びついている一方,国内的には非正規雇用やそれに伴う経済的格差の広がりに結びついているとも考えられる。
今回の富山大学大会におけるシンポジウムは「現代日本社会におけるナショナリズムとヘイト/フォビア」と題し,世界的にも政治の保守化の波が広がりつつある昨今において,とくに日本の近年の政治状況や社会状況を踏まえ,そのなかでも目立つ傾向としてナショナリズムや排外主義的な動向,そしてヘイト/フォビアがネットや街頭に露出する状況に関して,その背景や成立過程あるいは成立条件を分析し検討する。そしてその検討を通して,社会学がこのような現状に対してどのように取り組むべきかについて議論したい。
登壇予定者
◎報告者
・安田浩一(ジャーナリスト)
『ネットと愛国:在特会の闇を追いかけて』(講談社/第34回講談社ノンフィクション賞受賞作)著者。今回は基調報告をお願いする。
・金明秀(関西学院大学社会学部)
専門はナショナリズム,エスニシティ,階層に関する計量社会学。今回は現代日本における排外主義に関する調査結果について論じていただく。
・宇城輝人(関西大学社会学部)
専門は現代社会論。とくに労働を通して現代社会について論じる。最近の著書に『社会的なもののために』(共編著,ナカニシヤ出版,2013)。今回は,現代における「社会的なもの」と昨今のナショナリズムの動向について論じていただく。
◎コメンテーター
・板垣竜太(同志社大学社会学部)
専門は朝鮮近現代社会史。関連する著作として,『マンガ嫌韓流』を契機に企画した『日韓 新たな始まりのための20章』(共編著,2007)。
◎司会
・川端浩平(関西学院大学先端社会研究所/福島大学(2014年4月予定))
専門は差別・排除の社会学,日本研究,カルチュラル・スタディーズ。
*なお、本シンポジウムは、研究活動委員会と開催校である富山大学との話し合いにより一般公開とする。
(研究活動委員 佐藤哲彦・川端浩平)