第1シンポジウム
「グローバルな視点から日本社会のこれからを問う:ジェンダー・世代・公私・内外(仮題)」
経済、雇用、財政、社会保障、人口再生産・・・あらゆる面から見て日本が限界的状況にあるのは誰の眼にも明らかである。2013年度のシンポジウムでは、私たちが直面している種々の問題の解決をはかり再生の方途を探るために、グローバルな視点から、すなわち国際比較や諸外国の例を参照しながら、日本への提言をしていただくことを企図している。女性活用は保守政権も課題としているが、先行するEU諸国と比べて何が問題なのか。経済不況化での社会保障改革で日本に先んじた感のある韓国から何が学べるのか。ケアワークの不足はもはや国境を越えた協力により解決法をさぐる問題になっているのではないか。ひきこもり、保守化などばかり指摘される日本の若者に社会的革新を起こす芽は育っているのか。これらのテーマに関するそれぞれ最適の報告者を迎え、アジアとヨーロッパから日本のこれからを考えるシンポジウムとしたい。
<報告者>高橋美恵子(大阪大学)、金香男(フェリス女学院大学)、安里和晃(京都大学)、トゥーッカ・トイボネン(オクスフォード大学)
<司会者>落合恵美子(京都大学)・神原文子(神戸学院大学)
(研究活動委員 落合恵美子・神原文子)
第2シンポジウム
「質的調査のアーカイブ化の問題と可能性」
2011年度大会においてシンポジウム「社会調査とデータ・アーカイブ」を開催した。そこでは,アーカイブ化が一定の進展をし,いまや二次分析が可能となる環境が整えられてきている量的調査法に焦点を合わせた。他方,質的調査法はデータ公開においてもさまざまな困難と問題を抱えアーカイブ化そのものが遅れている現状がある。また,さまざまな社会問題の登場もあって質的調査の必要性は高まっているにもかかわらず人権問題や個人情報の保護などで質的調査の困難も増大しており,質的データの二次利用の可能性を探る必要性も出てきている。個別の事例を対象とする質的調査においては,調査倫理が一層問われるだけでなく,調査者と調査協力者の信頼関係を基礎に調査が成立しているとの調査者認識もあって,質的データのアーカイブ化や二次利用そのものの是非も議論の対象となり得る。質的調査におけるこうしたさまざまな課題と困難をあきらかにしたうえで,今後の進展の可能性を探りたい。
第一報告者の小林多寿子氏は,ライフヒストリー/ライフストーリー研究を専門とする立場から,現在行っている質的研究のアーカイブ化状況の調査をもとに,社会学だけではなく隣接領域も含み質的データのアーカイブ化の現状を報告する。第二報告者の森本一彦氏は,京都大学社会学研究室が蓄積してきた村落研究のデータ・アーカイブ化を推進している。実際にアーカイブ化を進めている立場からその過程で直面する課題や二次利用の可能性を報告する。第三報告者の石田佐恵子氏は,テレビ文化アーカイブを研究テーマにしており,今後ますます重要なデータであり公共性も高い映像メディア・アーカイブ化を中心に報告する。本シンポジウムでは討論者を立てていないが,フロアの参加者と率直で活発な意見を交換することで,質的調査のアーカイブ化の課題と可能性を浮かび上がらせることをねらいとしたい。
<報告者>小林多寿子(一橋大学)、森本一彦(京都大学)、石田佐恵子(大阪市立大学)
<司会者>桜井厚(立教大学)・轟 亮(金沢大学)
(研究活動委員 桜井厚・轟 亮)